インターロイキン阻害剤の市場規模、2023年には268億8000万米ドルに

新型コロナで短期的に停滞も回復基調に

グローバルインフォメーション株式会社の発表した最新のプレスリリースによると、インターロイキン阻害剤の市場規模は、2019年の182億2000万米ドルから2020年にはCAGRマイナス1.58%で179億3000万米ドルに縮小すものの、その後市場はCAGR14.44%で回復し、2023年には268億8000万米ドルに達すると予想されています。

2019年から20年のマイナス成長は新型コロナウイルスの影響でソーシャルディスタンスの確保、リモートワーク、産業やその他の商業活動の閉鎖など封じ込め措置が実施されたことに起因しています。

幅広い自己免疫疾患に活用されるインターロイキン阻害剤

インターロイキン阻害剤は、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患など幅広く自己免疫性疾患、炎症性疾患に活用されています。インターロイキン阻害剤市場は、インターロイキン-1、インターロイキン-5、インターロイキン-6、インターロイキン-17、インターロイキン-23などのインターロイキン阻害剤を製造する企業の売上で構成されています。

成長要素として多数の開発品目。高い成長率はアジア太平洋地域

乾癬、関節炎、炎症性腸疾患などの炎症性疾患に対して承認されている多くのインターロイキン阻害剤が市場のを牽引しています。

インターロイキン阻害剤は、炎症性サイトカインの作用を低下させ、宿主へのダメージを防ぐ自然免疫反応を刺激し、正常な組織の恒常性を維持します。現在、乾癬や乾癬性関節炎などの炎症性疾患の治療薬として48品目が開発段階にあります。このうち、20品目が第3相での臨床試験中です。今後これらのパイプライン医薬品が承認されることで更にインターロイキン阻害剤市場の成長が牽引されることになると予測されます。

地域的には、2019年のインターロイキン市場の最大地域は北米でした。アジア太平洋地域が予測期間中に最も急速に成長すると予想されています。

成長阻害要因としての高コスト、新市場への参入障壁

インターロイキン阻害剤は治療コストが高く、このことが市場での成長を阻害する要素と言えます。

自己免疫性疾患、炎症性疾患の治療薬として革命を起こした生物学的治療ではありますが、他の治療法に比べて高額です。2018年現在、生物学的製剤の治療費は年間1万ドルから2万5千ドル程です。年間の総費用においては、治療費に幅はあるものの、乾癬治療では2077ドルから13,132ドル、関節症性乾癬では10,924ドルから10.7050ドルと、患者1人あたりの年間費用がかかります。

そのため、今後新たな市場として発展途上国での活用が期待されるものの、これらの市場での現状の治療コストが低いことを考慮した場合インターロイキン阻害剤の市場成長を阻害する要素として価格が考えられます。

バイオシミラーへの期待と市場機会

インターロイキン阻害剤の特許切れは、より安価な代替品であるバイオシミラー医薬品に市場機会を与えています。インターロイキン分野の大手企業は、インターロイキン阻害剤のバイオシミラーの開発に力を入れています。

例えば、カナキヌマブ(イラリス)、ウステキヌマブ(ステララ)、トシリズマブ(アクテムラ)、セスキヌマブ(コセンティクス)などのインターロイキン阻害剤のバイオシミラーは、Mabpharm、NeuClone Pharmaceuticals、Gedeon Richter、Bio-Thera Solutionsがそれぞれ開発を進めています。

乾癬やその他の自己免疫疾患における生物学的製剤の使用は臨床的に有益であるにもかかわらず、治療費の高騰などの理由で多くの患者が生物学的製剤による治療を受けておらず、治療へのアクセスが制限されています。

これらの市場ニーズと治療効果への期待はさらにバイオシミラー利用のトレンドを後押ししています。

まとめ

乾癬、関節炎、炎症性腸疾患など多くの炎症性疾患の治療に有効とされるインターロイキン阻害剤は、新型コロナウイルスの市場への影響を短期的には受けるものの、長期的には回復をし、2023年には268億8000万米ドルの市場規模へ成長するものと予測されます。

特許切れによるバイオシミラーは、高額な治療費が阻害要因の市場で市場機会を獲得するでしょう。また、新たな開発品も後期臨床段階にあり、これら新薬の上市も期待されています。
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